2012/08/12

痣が、そう思った。
青、赤、紫、黄、茶、そのどれも目を惹くには充分で、ただその楽しみ方を考えあぐねていた。

ひとつは自らにそれを求めること。
ふたつめは誰かのそれを求めること。
みっつめはその写しを求めること。
よっつめはそれを与えること。
いつつめはそれを嬲ること。
むっつめはそれを嬲られること。

痣が、と夢にまで思うのに、自分がどれを選べば良いかわからない。今わかるのは視界に捉えただけで、自分を抑えることが出来なくなる程にそれを愛好しているということだけ。

ある人は転んだ証しとして、ある人はぶつけた証として、ある人は虐げられた証として、ある人は自戒として、何度も痛みを経験する。痛みを記憶し、触れることで再生する。そうして消えるその瞬間まで、じくじくと残る痣を、あれ程までに美しいものを、何故人は疎ましく思うのだろう。
そんなことをしても、和らぐ筈は無いのに。

美しく彩り、痛みを再生する。
痣が、こんなにも愛おしい。

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